Vol.007. 東京都「築地 有次」

築地で働く人達を支える老舗刃物店

「築地 有次」は、世界最大規模を誇る卸売市場「築地市場」と「築地場外市場」に店を構える老舗刃物専門店です。長年に渡って築地市場や関東圏の職人たちの仕事を支えています。
※築地市場の豊洲移転に伴い、2018年10月11日より築地市場内の店舗は豊洲市場へ移転となりました。

— 築地 有次さんではどのような物を扱っていますか?

プロから一般家庭まで料理で使用する包丁をメインに、砥石なども取り扱っています。特に築地は都内や関東近辺からプロが魚を仕入れにくる場所です。そういったプロが求める品質の包丁がメインになります。

世界的な和食ブームや和食がユネスコ無形文化遺産として登録されてから、海外から訪れる人も増えてきました。それを機に一般家庭向けにも包丁も増やしたんです。

— 海外で日本の包丁が注目されるきっかけが和食の料理人だったんですね。

和食ブームで海外に日本の料理人が呼ばれ、目の前で調理し和食を提供する。その時によく切れる和包丁が目に留まり和食だけでなく和包丁にも注目が集まりました。
それから海外からの築地来場者が増え、日本人でも一般の人が多く訪れるようになりましたね。

— やはり家庭向けの文化包丁が人気ですか?

日本人の一般の方だと普段使いのできる文化包丁。海外の方だと出刃包丁などの片刃包丁が人気ですね。
砥石も包丁同様に注目されました。包丁の切れ味を維持するには自分でも手入れをする必要があるので、砥石も一緒に購入されます。

— 砥石にも興味をもってもらえてよかった。ですが、多くの方が包丁の研ぎ方を知らないんじゃないですか?

そうですね。だから説明もしますよ。
あと、今は動画サイトとか便利な物がありますよね。動画サイトで紹介されているのも間違ったことを言ってない。でもよくわからないところや見えない部分もあるから、補足の説明もします。

— 人によって表現も違ったり、細かい事でも疑問に思うとプロに直接聞きたい気持ちもわかります。

簡単に自動で研げる機械があればいいんだけどね(笑)
とは言っても包丁は手仕事だから実際には微妙に歪んでいたり、平らじゃなかったりするから手で研ぐことが大切。 微妙な歪みや状況に合わせて対応できるから、切れて長切れする刃になる。それに手で研いだ包丁の方が味がありますよ。

— 研ぎについてお聞かせください。店内に縦型の水研機がありますね。水研機を使った研ぎは見る機会がないですから観光客に喜ばれそう。研ぎ直しもされてますよね。

ええ、うちでは研ぎや名入れ、形の修理などのメンテナンスもします。
アフターケアも含めて、お客さんに安心して買ってもらえるようにしています。有次の包丁じゃなくても研ぎ直しが可能です。
お店で研ぎ直しができるので預けてもらった包丁の刃を見て使い方、研ぎ方のアドバイスができるのがいいと思います。
例えば片刃の包丁の場合、裏面の凹みがなくなっていたら裏はいっぱい研いではダメだとか、使っている砥石の面は平らですか、とかね。

— 片刃の裏面について知らない人は多いですね。知らない事、分からない事をプロからわかりやすく聞けることで記憶により残ると思います。知識がゼロだと得た情報の判断もできないですし。

そうですね。こういった販売形態のお店だとすぐに聞けるのが安心できる理由かもしれませんね。

うちには料理人だけじゃなく、海産物の加工屋さんも訪れます。中には冷凍の食品もあるから普通に薄く研いでしまうと刃がすぐボロボロに。だからケバ気味に刃をつけましょうかとか、切る内容や使い方に合わせて研ぐことができます。

同じ包丁でも使う場所や使い方で違います。どれも同じように研いでいると、使い方と合わなかった職人さんからダメだと言われてしまいますから。

— ただ「切る」と言っても一般家庭とプロでは全然違いますしね。その用途や技術の違いに対応できる技術と知識が必要ですし理解しているから説明ができる。 だからこそプロから買いたいしアドバイスを聞きたいんだと思います。それでまた口コミやSNSを通じて広がっていく。

友人や知り合いに聞いて来店してくれた方は多くいますね。とても有り難いことです。

— ナニワ研磨の砥石でオススメはありますか?

一般の方だと中砥石の剛研デラックスの#1000がよく出ますね。あと青砥石の評判がいいね。

— 剛研シリーズはわかりますが、青砥石ですか。

青砥石は良く研げて特にツヤの出方がちょっと違う。粒度も#2000だけど仕上砥石としても十分使える砥石です。

人造砥石も使っている研磨材や製法で磨き面の仕上りがそれぞれ違いますよね。青砥石はいい感じにツヤが出るから、うちでも使っています。それに減りも少ないし厚みがあるからどっしりして研ぎやすい。薄くて軽い砥石は研ぐときに動きやすくて危ないからね。初めのうちはどっしりとした安定した砥石の方が安全。

それに青砥石は厚みがあるから一般家庭だと一生ものでしょ(笑)

— 厚さが50mm以上ありますからね。ゴシゴシ研ぐものでもないから、長く使えてお得ですね(笑)包丁の使い方や刃物研ぎについてアドバイスなどお聞かせください。

正しく研ぐことは大切なんだけど、一番大切なことは砥石の面を常に平らにすることですね。
上手く研げないと持ってきた包丁を見ると凹んだ砥石を使っている事がわかります。
凹んだ砥石だと鋭角な刃が丸く蛤刃になるから切り刃の幅が狭くなる。だから、面直し砥石やコンクリートブロックでもいいので削って凹みを直すことが大切です。

— ハッキリと凹んでいる砥石の面直しは大変ですしね。

だから研ぎ終わったら都度、砥石の面を平らにする事が大切です。

築地 有次さんは主に職人向けの本格的な包丁を取り扱う老舗包丁専門店です。そんな有次の包丁を求めて多くのお客さまが来店されていました。 今回、忙しい時間帯にも関わらず野﨑社長に直接丁寧にお店の事や研ぎについてお話をしていただきました。
店内では研ぎや名入れといった仕事だけでなく、一般の方には珍しい水研機による研ぎを直接見ることができます。ぜひ一度訪れてみてください。


■ pick up <エビ印 青砥石>

品番 サイズ mm 粒度
IR-0260 210×70×55 #2000

■ shop

築地 有次 本店
〒104-0045 東京都中央区築地4-13-6
URL:https://aritsugu.jp/

築地 有次 豊洲市場店
〒135-0061 東京都江東区豊洲6-5-1