Vol.002. 大阪府「のぼり刃物店」

暖かい雰囲気のある手道具の専門店

親子で大工道具や家庭用刃物を扱うのぼり刃物店2代目店主:林 亮太さん。
販売だけでなく大工道具や鋏、包丁、彫刻刀の研ぎや修理を行う専門店。

— のぼり刃物店さんの仕事について聞かせていただけますか。

亮太さん — 販売店なので大工道具、包丁の販売がメインになります。その他に鋸や包丁などをお預かりしメンテナスもしています。

— メンテナスはこちらの店内でされているのですか?

亮太さん — 基本、今ある設備で対応できる範囲の物はそうですね。対応の範囲を超える依頼の場合、例えば柄を溶接しないと直らないといった内容の時はお店では対応が出来ないので信頼できる他の専門の業者へ依頼をしています。

— ホームページを見てお聞きしたかったのですが、鋸の目立てというのは、もしかして刃のギザギザ部分を研ぐ事ですか?

亮太さん — そうです、そうです。目立ては刃のギザギザ部分をヤスリで一本一本研いでいきます。
鋸は切れ味が悪くなると刃を取り外して交換する替え刃タイプが多く流通していますが、それでも良い物は切れ味が違いますし使い慣れた道具を好むユーザーさんもいます。
父が若い頃にしていた時に比べ依頼数は減ってはいますが一定数依頼はありますね。

— こちらに鋸が沢山ありますよね。これがその目立ての依頼分ですね。今も金物屋さんの表に「目立て」と書かれた看板は見ますが、正直「なんだろう?」って思っていました。

亮太さん — 今の一般の人は知りませんよね。見る機会もそうないだろうし。
当時は髪が伸びれば散髪に行くのと同じような感じで切れ味が落ちれば目立てに出されていました。

※先代の隆彦さんが実際に目立て作業を見せてくださいました。

隆彦さん — 目立はまず鋸板のヒズミを取る作業があります。この「鋸鋏板(のこばさみいた)」にのこぎりを挟み、一本一本刃をヤスリで研ぎます。
両刃の鋸の刃は縦引きと横引きがあり、それぞれ違う刃の形状をしているので形状に準じてヤスリをかけていきます。

— なるほど。決まった形状の刃を適当に研いでしまうと当然刃が狂ってしまいますね。

隆彦さん — その他に「アサリ」と言って鋸の刃を右と左に振り分ける作業があります。それを「金床」と「アサリ槌」を使って、一本一本、左右に分けていきます。これを表と裏の両方を仕上げ「道」を開ける必要があります。開いておかないと鋸は前後に切る際、木に絞められて鋸が動かなくなってしまうので切ると同時に動けるスペースを作っています。
また、これがないと鋸に負荷が掛かり折れてしまいます。
昔はもっと依頼があって鋸が山積みでしたよ(笑)

— 職人の丁寧な仕事を間近で見れてとても勉強になりました。普段どのような依頼やどういったお客さんが訪れますか?

隆彦さん — 大工さん、建具屋さんをはじめプロの職人さんの需要が多いです。山鋸といった大きな刃物の需要は減っています。とても目を酷使する作業ですが、預かった大切な道具なので真面目に向き合って仕事をしています。 鉋に関しては皆さん自分で研ぐので研ぎ直しの依頼はありません。その分とても砥石にこだわる方が多くいます。結局毎日の様に研ぐので大きく欠けて機械で削る必要がない限り依頼はありません。

最近はホームページを見て遠くからのお客さんも増えましたが、プロ・アマ問わず一番多いのは口コミで来店される人が多いです。包丁研ぎの依頼はご近所さんに向けてだったのですが口コミで広がっていき、今では市外からも依頼があります。

— そういった人へオススメはどんな砥石ですか?

亮太さん — 自身も愛用している「剛研 玄人(プロ)#1000」ですね。僕自身いろいろな刃物を研ぐのに一番使う番手で、研ぎ感、刃の仕上りも気に入っています。使う対象の刃物の選択肢も広いのでオススメしやすい一本でもあります。
あと「スーパー砥石」の#10000の超仕上砥石もオススメです。

隆彦さん — 私は包丁研ぎに「剛研 富士 #8000」を使っています。刃が鏡面になりとてもよく光ります。

亮太さん — 剛研シリーズはいいですね。特に「剛研 デラックス #1000」と「剛研 隼 #4000」は一般の人に入門としてもオススメできます。隼は幅もあり使いやすいですし。プロからも評判のいい砥石です。

— 上達をしたい人や、これから始める人に何かアドバイスをいただけますか。

亮太さん — 気長にやることですね。あ、楽しんでって意味合いで(笑)
砥石で研ぐ事は難しいイメージがありますが正しい手順を踏んで研ぎをすればできる事なので。砥面を平らに直す・刃にカエリができるまで研ぐとか、ある程度の基礎的な事がわかれば少しずつできるようになっていきます。

— 確かにそこに辿り着くまでに挫折する人が多いですね。難しいイメージが先行して、やっぱり素人には無理なんだって。

亮太さん — はい。職人的なイメージがあり刃物研ぎを特別な事に思われる人が多くいます。実際に奥は深いですが間口はもっと広く誰でもチャレンジできる事です。
木工や特に料理をする人は多くいますし自分の刃物は自分で手入れをする方がいいと思います。最近は切れ味が落ちたら買い替える人が増えているようですがコスト的にも研いだ方がいいと思います。

— ここで同行していたスタッフが笑い出し、ぽつり一言。「砥面の乱れは心の乱れ・・・」

亮太さん — あー、うちは砥石の試し研ぎができるんですが、ちょっと遊び心で。試し研ぎの際に凹んでいる砥石をわざと渡して「砥面、乱れてるやん」って(笑)

— これ僕も気になっていました(笑) 実際、一般の人だと面直しの事を知っている人は少ないですもんね。

亮太さん — そうなんですよ。一般の人が鉋や包丁研ぎが上手く出来ないと相談されに来ますが、面直しについて聞くと一様に凹んでいる。「それだとなかなかきっちりとは研げないです。」と説明をさせていただいています。 刃物を研ぐ砥石だけがあればいい訳じゃなくて砥石も手入れが必要ですね。

のぼり刃物店さんは大工道具の手道具を中心に刃物や砥石を扱うお店で、店主の亮太さんと先代の隆彦さんの二人はあらゆる手道具の研ぎをされる職人さん。店内の半分は作業スペースで、タイミングが良ければ研ぎを見る事ができるかもしれません。
とても丁寧に相談に乗ってくれる専門店ですので、機会がありましたら是非訪れてみてください。


■ pick up <剛研シリーズ>

品番商品名サイズ mm粒度
QA-0311剛研DX210×65×30#1000
QA-0341剛研 玄人210×75×30#1000
QA-0354剛研 隼210×70×20#4000
QA-0358剛研 富士210×70×20#8000

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刃物専門 のぼり刃物店
〒567-0883 大阪府茨木市大手町7‐24
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